高校2年の頃、英語の先生に非常におとなしいK先生がいた。
普通科の高校なので、そんなに悪さをする生徒もいなかったのだが、何か問題を起こした生徒がいても
「おえんで、いけんで」(岡山弁で「だめだよ」の意)程度で済んでいた。
そんな感じなので授業中も生徒たちは、K先生の話を聞くことはなく、K先生もマイペースで授業を進めていた。
よって授業中は常に騒々しい状態にあった。
が、ある日の授業中、このK先生が
「うるさい!静かにしろ!」
と怒鳴ったのだ。
生徒は一瞬にして静まり返り、
「おっ、ちゃんと言えるじゃないか」と私も賛辞を送りたい気分であった。
しかしK先生は生徒の動揺に目もくれず、続けて、
「と父は言った」
と言ったのである。
つまり、
「『うるさい!静かにしろ!』と父は言った」
と言っただけなのである。
日本語を英語にする時間であった。
「と父は言った」
のあと「ぷっ」と吹き出す生徒の声があちこちで起こった。
おとなしい先生の必死の抵抗のようで今思い出してもおかしい。