私の会社は、住宅の販売をやっている関係で、営業職の者は、お客さんと一緒に市役所に行ったり、銀行に行ったりすることがある。
入社3年目の川井は、悪い男ではないのだが、インチキくさいメガネに加え、見かけもチャラく、高額な商品を扱う者にはおよそ見えない。
ある日、川井は、契約予定のおばあさんを連れて銀行に行くことになった。
おばあさんは、契約手付金の数百万円を振り込むという。
住宅の契約となると、400万円くらいの大金が当たり前に動く。
川井とおばあさんは、何度も折衝して、信頼関係はできあがっているのだが、
昨今の「振り込め詐欺」の影響で、チャラ男がおばあさんを連れて銀行へ来るとなると、銀行も警戒モードになった。
窓口の行員が、川井の名刺を何度も確認し、川井のチャラい風貌に目をしかめ、控室に戻ったまましばらく戻って来ない。
「オレ、絶対疑われてましたよ」
私が入金確認する担当だったのだが、川井にお客さんからの振り込みがあったことを
伝えたときに、以上ような苦労体験を聞かされたのであった。
川井よ、きっと私もお前を疑うと思う。