新幹線を止めた私の部下(065)
福岡勤務になり、入社12年でやっと男の部下ができた。
メタボ体型でトンカツが大好きな男である。
ここではボリックと呼ぶことにする。
この前、出張で鹿児島に一緒に行ったときにボリックと九州新幹線に乗った。
当時の九州新幹線は新八代~鹿児島中央間が開通していて、博多~新八代間は「リレーつばめ」という特急に乗り、新八代駅で同じホームに停車している新幹線に乗り換えるというシステムになっている。
何も知らない観光客らしき夫婦は、新八代駅で寝たまま起きてこない。
おそらくこのまま鹿児島に行けると思っているのだろう。
確かに初めての人にはリレーつばめ、新幹線つばめの違いがよくわからない。
新幹線つばめが動き出したとき、ボリックが言った。
「僕この前、新幹線止めたんですよ」
ボリックが言うには、
特急リレーつばめにスーツの上着をおいたまま、新幹線つばめに乗り込み、検札の車掌に事情を説明しているうちに新幹線が動き出し、数mだか進んでまた停車し、スーツを取ってきてくれたらしい。
以前、議員がのぞみ停車駅でない駅に新幹線を止めたりして問題になったこともあるが、スーツを忘れたぐらいで新幹線が止められるのかと思った。
東海道・山陽新幹線なら無理だったと思う。
ボリックは「新幹線を止めた男」として私の中での評価は上がった。