私が高校の頃の話。
私には13歳下に妹がいる。
私が高校生の頃、妹はまだ4歳くらいで一日のほとんどを明治生まれのばあさんと過ごしていた。
ばあさんの一日は午前5時ぐらいのNHKの放送開始に始まる。
しかも耳が遠いため、ものすごい音量だ。
田舎なので家同士がくっついていないからいいようなものの、都会なら「騒音ばあさん」になっているはずである。
そして昼になると、ばあさんは13時ごろからの「花王・愛の劇場」なるドロドロした
ドラマを見る。
そして夜は20時にはふとんに入ってまた大音量のまま寝ている。
やかましいので私がテレビを消す。
そんな毎日の繰り返しである。
ある日の夜、父が家に電話をしてきた。
「今夜は仕事が忙しく、帰りが遅くなる」
との内容だったらしい。
それを聞いた4歳の妹は
「まさか、女の人と会っとるんじゃないでしょうねぇ」
と言った。
母は、絶対ばあさんが見ている昼のドラマのせいだと言って憤慨していた。
妹は、ばあさん仕込みの流ちょうな岡山弁を話せる貴重な人材なのだが、結婚して東京に出ていってしまった。