我が家のすべらない話【すべて実話】

身の回りで起こった面白い話を毎日12時30分に更新していましたが、ネタが尽きてきたので2023年7月23日より更新頻度を減らします。

まさに殴ろうとした時に戦意喪失させたひと声(107)

中学校の頃、しょっちゅう周りでケンカが起こっていた。

ケンカと言っても不良グループの乱闘というより、普段バカをやっている者同士のささいな揉め事が発端となり、殴り合いに発展するのである。

 

クラスに田中という頭の悪い男がいた。
ほんとに頭が悪く、地域の模試で1332人中、1330番台だったという輝かしい記録を持っていた。
国語の本読みでは、漢字のたびに読めなくなっていた。
国語の先生が田中に
「お前はこのままでは、車の免許が取れないぞ」(問題文が読めないから)
とまで言われていた。

 

その田中と影下(お調子者)が休み時間に口論になった。
原因はよくわからない。
そうこうしているうちにチャイムが鳴り、みんなが席に着き始めた。
ケンカは一時中断した。


そのもめ事を傍観していたクラスで一番のワルの板東が影下に
「あれは、田中の方が悪い。影下、田中に一発くらわせてこい」
みたいなことを吹聴した。

 

みんなが席に着いて注目している中、田中の席に近づく影下。
影下は、田中の胸倉をつかみ、右手の握りこぶしを肩まで振り上げる。
影下の表情は、劇画のようだ。

 

「おおっ」

 

クラス全員が固唾を飲んだその時。

 

「影下、先生がきたぞ!」

 

廊下に近い席の奴が叫んだその時、影下は、鬼の形相からいつものバカ面にすでに戻っており、自分の席に逃げ帰って行った。

一発も殴らずにである。

 

クラス中が大笑いの中に現れた若い英語の先生が「どしたの?」とキョトンとしていたことが忘れられない。